<記者の目>
巨人が来季のDH制暫定導入を提案したことを14日、発表した。山口寿一オーナー名の文書でこの日のセ・リーグ理事会に提出された。新型コロナウイルスの影響が残る中、投手の負担軽減やチーム強化、プロならではの試合の提供を理由に挙げた。だがセの他球団からは従来通り、慎重論が根強く、来季導入は見送られることが決定的になった。
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今回もDH制導入の議論は平行線をたどった。数年前から議論されているが、進展の跡が見えない。不毛に時間だけが経過しているように思える。
日本シリーズでもソフトバンクが投手故障のリスク軽減などの観点から全試合でのDH制採用を提案し、巨人が了承。だがその時も初戦2日前の臨時実行委員会ではセ・リーグの他球団からは強い反発を受けた。最終的には日本シリーズを主催するNPBの長である斉藤コミッショナーに一任され、セでの導入の議論として継続しないことで限定的な導入が認められた。
今回、山口オーナーは3つの理由を挙げ、原監督はシリーズ前に「子どもたちがどれだけ夢を持てるか。レギュラーが9人より10人になれば教育的。DH制があれば野球人口も増える」と持論を唱えていた。
反対派もスタンスはある。「投手交代の妙が減る」「野球は9人で行うもの」と伝統を尊重する声もある。また今回、投手の健康管理を理由に挙げたことに、あるセ・リーグ球団首脳は「本当にけが予防、疲労解消できるか? 」と疑問を投げかけた。因果関係の実証は確かに難しいだろう。
一方で提案、即見送りはあまりに拙速ではないか。巨人以外のある球団は暫定導入に理解を示し、議論の継続にも前向きだったが、他球団はすでに近年議論し尽くされているとして取り合わなかったという。「(来季の)編成が終わっている」との声も上がったというが、22年シーズン以降なら対応できるのか。
「今後も議論をする」と聞こえはいいが、何も進んでいないのは誰の目にも明らかだ。反対するのであれば、対案がなければ建設的な議論とは言えない。巨人が提案を公表すれば協議に応じないと強硬な姿勢を見せた球団もあるというが、正面から難題に取り組まなければ球界の発展はない。【NPB担当=広重竜太郎】
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