角田裕毅は先週末、バーレーンで開催されたF1プレシーズンテストで総合2番手タイムをマークし、パドックと海外ファンの脳裏に自身の存在を強く刻み込んだ。ライバルより早めにDRSを稼働させた事も好タイムの一因ではあるが、彼に対する高評価を損ねるものではない。
バーレーンテストの最終3日目、日没を迎えた”ハッピーアワー”に入ると各車柔らかめのコンパウンドを履いてのパフォーマンス合戦が勃発。これにアルファタウリ・ホンダの角田裕毅が切り込んだ。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がテスト初となる29秒台を刻むと、グリッド最年長キミ・ライコネン(アルファロメオ)がこれを更新。その直後に最年少、角田裕毅がアタックを行いトップに立った。
ただ再度コースインしたフェルスタッペンが28秒台に入れ込み、後続を引き離しにかかったが、角田裕毅は臆することなく全開でコースを駆け抜け、1000分の93秒差の2番手タイムを叩き出した。
Sky Sportsで長年に渡ってコメンテーターを務める元F1ドライバーのマーティン・ブランドルは「彼には燃えるような何かを感じる。私は彼が好きだ」と角田裕毅を評した。
「鈴木亜久里や片山右京、佐藤琢磨や小林可夢偉など、我々は近年、日本の素晴らしいドライバー達を目にしてきた。私が角田に感銘を受けたのは、ルーキとしての彼の存在感と、これほどの短期間で難なくプレミアクラスに上がってきた点だ。彼は今年、我々に多くの楽しみを与えてくれるだろう。私はそう確信している」
角田裕毅がF1デビューのチケットを手にしたのは、欧州へと戦いの場を移して2年目の終わり。シングルシーターデビューを果たした2016年から数えても僅か4年という驚異的なスピード出世だった。
レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコはRTLとのオンラインインタビューの中でテストを振り返り「うちの角田裕毅はまだ20歳で、このマシンに乗ってまだ1日半しか経っていないにも関わらず、センセーショナルなパフォーマンスを見せてくれた」と語り、合格点を与えた。
F1へと至る階段を近年稀に見るスピードで駆け上がってきた角田裕毅にとって、F1マシンでの事前準備の機会は限られていた。そこでチームはデビュー戦に向けて、STR14やAT01といった旧車でのプライベートテストを組み経験を積ませた。バーレーンテストの結果は、こうした取り組みの成果を強調した。
大きな信頼性トラブルもなく精力的に走り込んだテストとなったが、順風満帆というわけでもなかった。角田裕毅が担当した2日目土曜午前のセッションでは、DRSと燃料システムに問題が発生した。
角田裕毅は、ミディアムコンパウンドでのプッシュラップではDRSが機能せず、最後のアタックでは「ペダルか何かが壊れた」と説明。正直に言えば「ストレスを感じた」とこぼしたが、最終日に大きなトラブルはなく91周を走破。3日間でトータル185周を走り込んだ。
「この2日間はちょっとした不運に見舞われましたが、今日はメカニックとホンダが本当に良い仕事をしてくれたので何の問題もなく、1日中快適にセッションを走ることができました。91周を達成できましたし、本当に良いテストだったと思います」
なお最終日にはターン7の出口でリアを失いハーフスピンを喫する場面があった。先方にはライコネンがコース脇に控えていたが幸いにも接触はなく事なきを得た。
これについて角田裕毅は「強風の影響」と説明し「キミに”ハロー”と言ってからピットに戻りました。挨拶できて良かったです。まだ直接会った事はないのですが、やっと挨拶できました」と冗談を飛ばした。
全てのテスト日程は終了し、2週間後の週末には角田裕毅にとってのデビュー戦となる今季開幕バーレーンGPが控える。
アルファタウリ・ホンダは、僅かの差が決定的な違いとなって結果に表れ得る中団グループにいる。ヘルムート・マルコはアルファタウリの現在地点を「中団先頭を争う位置」と推測。アルピーヌやフェラーリ、アストンマーチンらとの壮絶な接近戦を予想している。
ポイントが与えられる入賞は上位10台。優勝争いを繰り広げるであろうレッドブル・ホンダとメルセデスだけで4つの枠が埋まるため、中団チームは残された6つの席を懸けて争うことになる。
入賞は決して簡単な話ではないが、角田裕毅には「我々に多くの楽しみを与えてくれるだろう」とのブランドルの言葉を素直に受け入れられるような何かがある。
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