日本サッカー協会(JFA)が、東京・文京区に所有するビル「JFAハウス」の売却を視野に検討を進めていることが1日、分かった。2002年W杯日韓大会の大幅な黒字などにより約60億円(当時)で取得した地上11階、地下4階の「マイホーム」だが、コロナ禍による日本協会の大幅な収入減などによって、売却を含めて検討することになった。来年8月までに結論を出す見通しだ。
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関係者によると、日本サッカー協会の田嶋幸三会長(64)が1日の定例の朝会で「赤字が続き、JFAハウスの売却も視野に入れつつ、事業を見直す」と職員に伝えたという。サッカー界の象徴「JFAハウス」の売却はすでに9月の理事会で議論され、結論を来年8月までに決めることになっているという。
日本協会は今年で創設100周年の節目を迎えた。2003年に誕生したJFAハウスは同協会の悲願だった。東京・JR御茶ノ水駅近くのビルは地上11階、地下3階で延べ床面積は2万2994平方メートル。購入費用は約60億円だった。地下には展示場「JFAミュージアム」、目の前の道路は「サッカー通り」と名づけられた。渋谷区から文京区に拠点を移し、サッカー文化を発展させてきた。
しかし、コロナ禍が長期化したことで日本協会は大打撃を受けた。大きな収入源である日本代表戦も観客数の制限が続き、国際親善試合ではチケット代やグッズ販売、放映権などを含めて1試合約5億円の売り上げが半減した。コスト削減などで赤字を抑えてきたが、オミクロン株の出現など先行きは予断を許さない。20年末の時点では、21年度から4年間で合わせて約80億円の赤字となる見通しもある。
JFAハウス自体も、テナントに空きが増えている状況。売却することで一時的に大きな資金が入るだけでなく、管理コストなどの経費削減の効果もある。20年には千葉・幕張に日本代表のトレーニング拠点のJFA夢フィールドが完成し、すでに代表の強化部門などの中枢部が移っている。今後は他の部門も移行する予定だ。
コロナ禍はサッカー界にも大きな影響を及ぼしている。全国の街クラブでは経営難に追い込まれているところも少なくない。そうした“サッカーファミリー”を助けるために資金が必要となる。協会の財政が安定すれば、日本サッカー界の中心として、経営に苦しむ全国のクラブに手を差し伸べることもできる。
今年、節目を迎えた日本協会が、大きな決断を迫られている。
◆日本サッカー協会 日本のサッカー界を統括する組織。20年現在、登録チーム数2万6590、登録選手数81万8414人。公益財団法人として12年4月1日から活動。14年度の決算では約21億円の黒字。しかしコロナ禍で、収入の柱の日本代表関連事業が収益減となり、21年度予算報告では約28億円の赤字を見込む。もう1つの収入源である選手登録料も、登録者数96万4328人の14年をピークに減少傾向。
◆JFAハウス 正式名称は日本サッカー協会ビル。所在地は東京都文京区サッカー通り。92年に三洋電機マーケティング・プラザビルとして建てられ、03年に日本協会が取得。地上11階、地下3階建て。ビルの前の「金花通り」は「サッカー通り」に改名された。区道の約200メートルの区間で、区と地元商店街が協議して決めた。テナントにはJリーグやなでしこリーグ、日本フットボールリーグ(JFL)といった各サッカー競技団体が拠点を構えている。
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