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久保建英は肉弾戦上等のチームで困惑。蚊帳の外だったアラベス戦、評価を高めるには何が必要か【分析コラム】 - フットボールチャンネル

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ファウルとクリアの応酬

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【写真:Getty Images】

 非常に見応えのあるゲーム…とは残念ながら言い難かった。確かに激しさはあったものの、パスを繋ぐ、シュートを打つといった“サッカーの面白さ”を90分間の中で感じることがあまりできなかった。

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 前節アスレティック・ビルバオに1-5と大敗し13位に後退したヘタフェと、リーグ戦4連敗中で降格圏の18位に沈むアラベス。両者ともに悪い流れを払拭するためにも、この試合では是が非でも勝利が欲しいところだった。

 ただ、いざキックオフのホイッスルが鳴ると、お互いに「勝ちに行く」というよりは「負けない」ことに意識を強く向けてしまった印象がある。それが、ヘタフェ対アラベスという試合の全てだった。

 お互いに自陣でボールを失いたくはないので、とにかくリスクを冒さずロングボールを蹴りまくる。そして前線の選手に空中戦を任し、こぼれ球を拾って「さあ、ここから」といった内容が延々と続いた。ビルドアップという選択肢は両チームにほとんどなく、技術的な問題、そしてお互いに人に対して強いこともあり、パスが3本以上繋がることは非常に珍しかった。パス成功率はヘタフェ63%、アラベスに関しては何と48%である。

 そして、とにかくファウルが多く、1分に1回はプレーが止まる。これはもちろんオーバーな表現だが、そう感じるほど人がよくピッチに転がった。恐らく、パスが繋がる回数よりも人が倒れた回数の方が多かったのではないか。イエローカード6枚、ファウル数39回はあまりに多い数字である。

 もちろん、流れの中からの得点の気配は皆無。チャンスのほとんどはセットプレーであり、最終的に両チームのシュート数は90分間でわずか11本に留まっている。

久保とアレニャのツーシャドーは機能せず

久保建英
【写真:Getty Images】

 ホセ・ボルダラス監督はアラベス戦でこれまでとは違う3-4-2-1というシステムを採用していた。最前線はハイメ・マタ、その後ろのツーシャドーには今冬新加入のカルレス・アレニャ、そして久保建英の両者が並ぶことになった。

 前節のビルバオ戦では対峙したミケル・バレンシアガに手を焼きほとんど持ち味を発揮できなかった久保だが、アラベス戦はそんな前節よりも良い動きをみせていたようにも思う。サイドに開いて幅を作ったり、外から中に入ってマタやダミアン・スアレスにスペースを与えたり、反対サイドまで流れて味方をサポートしたりと、常に足を動かし続けていた。

 また、この日は中央で起用されたこともあり、ペナルティーエリア内へ侵入する機会も普段よりは多かった(PA内でのタッチ数は4回。ちなみにビルバオ戦は2回、ウエスカ戦3回)。61分には相手センターバックとサイドバックの間を突くようにランニングし、D・スアレスから際どいクロスを呼び込んでいる。ビルバオ戦ではなかなか見受けられなかったプレーである。

 しかし、動き自体は決して悪くなかった久保だが、先述した通りこの試合はパスの繋ぎを捨てたロングボールの蹴り合い。そもそもボールに触れる機会が少なかったので、インパクトという意味ではかなり薄かったという点は否めない。

 データサイト『Who Scored』によると、久保のタッチ数はわずか37回でパスは16本に留まっており、アタッキングサードでのパスは9本、ドリブル成功数3回、シュート1本という結果に終わっている。ボールを持っても激しいファウルを受けることが多かった印象だ。

 また、久保と同じくシャドーに入ったアレニャはタッチ数41回、パス29本、アタッキングサードでのパス16本、ドリブル成功数1回、シュート0本というスタッツ。こちらも久保と同じく不完全燃焼に終わっている。

 と、データを見ても分かる通り、ツーシャドーに入った両者は完全に蚊帳の外。バルセロナのカンテラ(下部組織)出身である二人は攻撃に新たなスパイスを加えることを期待されてヘタフェにやって来たが、ボールが空中を飛び続ける中で違いを生みだすのはいくらなんでも難しすぎた。アラベス戦で技術のある二人がシャドーに置かれた意味は、ほぼなかったに等しいと言わざるを得ない。

久保にとって試練は続く

 ただ、このアラベス戦で分かったのは、やはりアレニャと久保の加入だけではチームとしての戦い方は大きく変わらないこと。結局、肉弾戦上等といったスタイルの方が選手にも浸透しているし、以前からの上積みはないにしてもある程度はそれで戦えてしまうのがヘタフェである。

 その中でフィジカルを自慢とはしていない久保はどうして評価を高めていくのか。やはりゴールやアシストという結果を残すことである。これが一番の近道だ。

 また、アラベス戦のようにボールがそもそも自身の足下に来ない場合には、左サイドのマルク・ククレジャのように上下動を繰り返して自らボールに絡みに行くしかない。つまり、久保がチームの戦い方に合わせていく必要が今後はあるということだ。

 ヘタフェはこの後、厳しい日程が続く。次節はセビージャ戦、その次はレアル・マドリード戦、そしてその次はレアル・ソシエダ戦である。相手の方が力で上回っているのは明らかで、アラベス戦のようにロングボールを蹴る回数は多くなるだろう。

 その中で久保はどう自らの存在価値を示すのか。19歳のレフティーは決して王様ではない。チームではなく、まずは個人として何かを変えなければ、このままズルズルといってしまうだろう。

(文:小澤祐作)

【了】

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