キャンプや練習試合ではマウンドの柔らかさに苦慮していたことを指摘
3月26日に開幕する今季のプロ野球。注目の1人が8年ぶりに日本球界に復帰した楽天・田中将大投手だろう。一般的に柔らかいとされるマウンド、MLBとは異なる登板間隔やボールなどにどう適応していくのだろうか。現役時代にロッテや米大リーグ・インディアンスなどで通算234セーブをマークした小林雅英氏が自身の経験も踏まえて語ってくれた。
昨年まで7年間ヤンキースの先発ローテの一角として投げ続けてきた田中将。過去にNPBで7年(2007~13年)のキャリアを積み、通算99勝を挙げた実績があるとはいえ、メジャーに馴染んだ投球フォーム、投球スタイルをNPB仕様に再び戻すのは決して容易なことではないという。小林氏はロッテから海外FA権を行使して2008年オフにインディアンスへ移籍。2年間メジャーを経験した後、2010年に巨人の一員としてNPBに復帰した当初、やはり柔らかなマウンドに違和感を覚えたという。
「踏み込む足、左足がしっかり止まらない。ズルっといく感覚なんですね。私は左足の付け根、股関節で踏ん張って止めようとしていました。なので(付け根部分に)疲労、張りが出ました。違和感がありましたね」
田中将大の沖縄・金武キャンプでのブルペン投球、登板した2月の実戦2試合は明らかにマウンドへの戸惑いが見て取れたという。
「キャンプ序盤では、やはり踏み込む足が弱く感じました。気にしながら投げていたのでしょう。実戦では力を入れて投げにいった時に首をひねるシーンもありました。(日本ハムの)中田選手に打たれた本塁打は自分が意図していたよりも変化球が落ちなかったのだと思います。ボールが異なることで落ち幅、曲がり幅も違ってくるので、この調整も必要です」。
ただ、近年はNPBでもマウンドを硬く整える球場が増えており、登板を重ねれば解消できる問題だと指摘する。「(2010年)当時の私と違って、彼はオープン戦で結果を残さなければいけないという立場ではない。徐々に形はできていくでしょう。開幕の時点で8~9割の状態に仕上げてくると思います」。
涌井、田中将、則本昂は中5日&年間30試合先発が「可能」
メンタル面では期待を背負い過ぎないことも大事だという。2013年に24勝無敗という無双投球で楽天を初の日本一に導き、ヤンキースでは78勝を挙げた右腕。ファンの期待は高まっている。「バリバリのメジャーリーガー、ヒーローが帰ってきたという目で見られるでしょう。でも負ける時だってある。自分を見失わずに次に臨めるかが重要だと思います」と語る。
その意味で、楽天にはレベルの高い先発投手が揃っていることが田中将の助けになるという。涌井秀章、岸孝之、則本昂大。実績ある投手たちが揃っている。開幕投手(対日本ハム、楽天生命パーク)に涌井が決まったことに「これで田中投手が務めることになれば過度のストレス、プレッシャーがかかっていたはず」と解説する。
では、メジャーでは中4日だった登板間隔が中6日に変わることで影響は出てくるのだろうか。「いきなりはリスクがある。徐々にだと思います。最初は100球でもいいですし、色んな意味で安定した時に120球いってみようかとか、そういう形になると思います」。
さらに小林氏は田中将、涌井、則本昂の3投手を「中5日」で回す案を挙げた。「この3人は可能だと思います。原則中5日で詰めて、日程によって時に中6日に戻すとか色々なことができる陣容だと思います。そうすれば3人が30試合以上先発することが可能になります」。
田中将が加わることで中5日のローテーションも可能に――。レジェンド右腕の加入で新たな野球が見られるかもしれない。(片倉尚文 / Naofumi Katakura)
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