posted2021/12/01 17:07
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
JIJI PRESS
日本ハムの監督に就任して以降、華やかなビジュアルと独創的な“新庄語録”の数々で、ファンやメディアの注目を一身に集めているビッグボスこと新庄剛志。一方、日本のサッカー界に目を向けると、少なくとも話題性という観点では比肩しうる存在は見当たらない。なぜサッカー界には“新庄剛志級”のインパクトを持つ監督が生まれないのか。『サッカーマガジン』元編集長で本誌『Number』にもたびたび寄稿する北條聡氏に話を聞いた。
まず前提として強調しておきたいのは、野球界とサッカー界では業界のルールそのものがまったく異なるということです。わかりやすく言えば、サッカー界は「弱肉強食」の傾向が非常に強い。日本のトップリーグを比較すると、サッカーは全18チーム(2021年は全20チーム)の1リーグ制ですが、野球はそれぞれ6チームの2リーグ制。そしてサッカーには昇降格制度がありますが、野球に関してはそれがありません。
サッカーの場合、降格した場合は上のカテゴリに選手を持っていかれ、スポンサーも離れてしまうという大きなリスクがあります。クラブにとって、このダメージは計り知れません。ありえない仮定ではありますが、プロ野球が「最下位のチームは社会人野球や独立リーグのチームと入れ替え」という制度になったとしたら、蜂の巣をつついたような騒ぎになりますよね(笑)。どんな形にせよ競争が激化すれば、下位に沈むことを避けるために監督選びの基準もよりシビアになるのではないか、というのが僕の考え方です。
降格すればレジェンドにも容赦のない批判が…
選手の獲得に関しても、野球はドラフトによって戦力の均衡を図っています。しかしサッカーは完全な自由競争なので、富めるものはますます富んでいく構造です。野球はFA権を取得するまで時間がかかりますが、サッカーにはそういったルールもないので、将来の主力として期待していた選手がごっそりと抜けてしまうこともある。シーズンの途中に三笘薫、田中碧という日本代表クラスの選手が海外移籍した今年の川崎フロンターレがある意味で典型ですね。
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