東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)は、女性を蔑視する発言をした責任を取り、会長を辞任する意向を周囲に伝えた。11日、複数の関係者が明らかにした。組織委が12日に開く緊急会合で表明する見通し。
問題の深刻化を受けて、組織委は12日午後、評議員、理事を集めた合同懇談会を開く。当初は経緯を説明、陳謝し、続投への理解を求める方針だった。だが国内外に反発が広がり、今夏の大会準備への影響も出始めていた。
発言を受けては、国内外のメディアから「性差別的」と厳しい批判を浴び、SNS(ネット交流サービス)でも辞任を求める声が相次いだ。10日には東京都の小池百合子知事が今月中旬で調整されていた国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長らとの五輪に向けたトップ級の4者協議を「今ここで開いても、あまりポジティブな発信にはならないんじゃないか」と述べ、欠席する意向を表明。野党4党は森氏の辞任を菅義偉首相に迫る考えで一致していた。
森氏は3日に東京都内で開かれた日本オリンピック委員会(JOC)の評議員会で、以前会長を務めていた日本ラグビー協会を例に出して「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言し、波紋を広げた。4日には東京都内で記者会見を開き、「五輪・パラリンピックの精神に反する不適切な表現だった」と発言を撤回し、陳謝する一方、会長職の辞任は否定した。それでも「面白おかしくしたいから聞いてるんだろう」と声を荒らげる様子は「逆ギレ会見」とさらなる批判を招いた。
IOCなどは森氏の発言撤回を受け、4日に「この問題は終わった」と早期の事態収束を図った。だが9日には「全く不適切で、(男女平等を目指す)IOCの公約にも反している」と改めて声明を出した。
SNSでは、政府や東京都、組織委宛てに森氏の処遇の検討などを求める署名活動が展開され、日本に駐在する各国の大使館などは「沈黙しないで」と呼び掛けた。米紙ニューヨーク・タイムズなどの海外メディアも対応を疑問視する論調が相次ぎ、ロイター通信は「発言への批判は衰える気配を見せない」と伝えていた。
森氏は4日の会見前に毎日新聞の取材を受け、「元々、会長職に未練はなかった」と辞任する意向を語っていた。組織委幹部の慰留などを受け、思いとどまったという。だが、新型コロナウイルスの感染状況の悪化が続く中、発言に対する批判は五輪開催へのさらなる逆風となり、会長職の辞任は避けられない情勢となった。
森氏は東京五輪招致委員会の評議会議長として招致に関わり、2014年1月の組織委発足時から会長を務めてきた。【小林悠太、村上正】
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